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2006年10月

2006.10.31

[映画]熱血男児/열혈남아

21:00
ブロードウェイ劇場1館
F列13番(Daum Cafe ソルトイ試写会)
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監督:イ・ジョンボム/이정범
出演:ソル・ギョング/설경구、チョ・ハンソン/조한선、ナ・ムニ/나문희、ユン・ジェムン/윤제문、オ・ヨン/오용、リュ・スンヨン/류승용、シム・イヨン/심이영
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 少年院で知り合い、同じ組織に属するヤクザのチェムン(ソル・ギョング)とミンジェ(リュ・スンヨン)。上から命じられた任務でミスをして、ミンジェは相手方に殺されてしまう。復讐を誓ったチェムンはミンジェを殺したテシク(ユン・ジェムン)の故郷ボルキョへ向かい、テシクの母親チョムシム(ナ・ムニ)の食堂に出入りする。手下のチグク(チョ・ハンソン)と共にテシクを待つ緊張の日々が続く中、チョムシムとチェムンの間にあたかも母と息子のような情が芽生え始め……。

 ソル・ギョングの眼つきの鋭さは超一品。チョムシムに対するぶっきらぼうな「息子」ぶり、タバンアガシへの馴れ馴れしさ、子分チグクへの非情さ、テコンド道場の子供たちへのでたらめな接し方。自分でもよく分かっていない彼の感情と行動がうまく表れている。
 そして、何と言っても母親役のナ・ムニの演技が素晴らしい。ふとした時の表情や何気ないセリフに、いくつになっても子供のために心労が絶えない母親の悲しい性がじんわりと伝わってくる。ヤクザになった息子を認められないのも、もう一人の息子が死んだことを認められないのも、息子への愛情ゆえ。対象を失った母の情愛はチェムンに向けられるが、それもチェムンの姿が同じヤクザである自分の息子にダブるから。ナ・ムニの演技は、母親の愛情が利己的でも普遍的でもありうることをごく当たり前に見せてくれる。
 母の愛情を知らないチェムン、母と和解できないテシク、母の入院費用を稼ぐためヤクザの道に入ったチグク。タイトルは「熱血男児」だが、この映画のテーマは「母」である。

 残念なのは、映画全体がストーリー(セリフ)と役者の存在感に頼り過ぎていて、登場人物たちの背負っているものが見えて来ないこと。序盤のセリフが完全に聞き取れていないせいもあるだろうが(封切後再見予定)、しかるべきショットがあるべきではないか。
 また、宣伝が今ひとつ。本編の名場面を予告編で見せ過ぎていると思うし、チラシのストーリー解説には些細な部分ではあるが編集意図を無にするネタバレがある。
 下半期の忠武路最高のシナリオとも言われていただけに惜しい。

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2006.10.28

[映画]秋へ/가을로

14:10
MMC10館
B列91番 6,000W(チケットリンク・パープル会員1,000W割引)
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監督:キム・デスン/김대승
出演:ユ・ジテ/유지태、キム・ジス/김지수、オム・ジウォン/엄지원
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 ヒョヌ(ユ・ジテ)とミンジュ(キム・ジス)は1ヶ月後に結婚を控えた恋人同士。しかし、ミンジュがデパート崩壊事件の現場にいたことで、二人の幸福な未来は失われてしまう。ミンジュの死後、虚しい日々を送るヒョヌの元へミンジュのノートが届く。そこには、旅行番組のPDとして国内の美しい風景を知り尽くしていたミンジュが立てた新婚旅行プランが詳細に書き込まれていた。ヒョヌはノートを片手にミンジュのプランに従って東海(日本海)沿いの旅行を始めるが、行く先々で一人旅をする若い女性セジン(オム・ジウォン)に出会う。偶然の繰り返しのように見えた二人の出会いだったが、それはミンジュを介した必然的な出会いであった。

  今年のプサン国際映画祭オープニング作品として、また、1995年6月に起きたソウル三豊デパート崩壊事件を背景としたラブストーリーということでも注目を集めている作品。ストーリーの主筋は婚約者を失ったヒョヌの癒しの旅であるが、追憶としてたどられるヒョヌとミンジュの恋愛、ミンジュとセジンの交流、ヒョヌとミンジュの両親の関係をうまく織り込みながら物語が進んで行く。失われた後に実感する失ったものの輝きから、ヒョヌとミンジュのラブストーリーが浮かび上がる。
 ヒョヌとミンジュの関係は「笑顔」がキーポイントで、ユ・ジテの笑顔がこれにぴったり嵌る。ミンジュの役柄は容姿・能力・性格すべてに出来すぎの感もあるが、容姿も能力も凡庸らしいセジンとの対照は明快。
 秋の美しい風景は、時に絵ハガキ的でもあるが、ミンジュが撮りためていた写真と関係であえてそのような映像作りをしているらしい。あるいは、現地は本当に絵ハガキ的な風景なのかもしれない。

 舞台挨拶の回に鑑賞。多少記憶が曖昧だが。
 ユ・ジテ:舞台挨拶は初めてでドキドキしている。空席があって心が痛む。良いと思ったら周りの人にも勧めて、空席がなくなるようにしてほしい。
 キム・ジス:俳優が出てきてニコニコ笑うだけの映画にはしたくなかった。この映画を通じて皆さんも秋への旅行をした気持ちになってくれるといいと思う。

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[映画]偉大なる系譜/거룩한 계보

16:45
MMC2館
B列805番 6,000W(チケットリンク・パープル会員1,000W割引)
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監督:チャン・ジン/장진
出演:チョン・ジェヨン/정재영、チョン・ジュノ/정준호、リュ・スンヨン/류승용
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 チンピラヤクザのチソン(チョン・ジェヨン)はボスの命令で一仕事して刑務所へ入る。刑期は7年。そこで、死んだとばかり思っていた友人スンタン(リュ・スンヨン)に再会する。チュジュン(チョン・ジュノ)はチソンのいなくなった後、ボスの右腕となる。チュジュンは自分のことをヤクザではなく組織に勤める「会社員」だと考えているが、一方でチソンへの友情は厚い。チソン、チュジュン、スンタンは少年時代からの親友3人組なのだった。
 組織に見捨てられ裏切られたと知ったチソンは、刑務所からの脱走を企て、組織への復讐を誓う。珍騒動の末に脱獄したチソンの行く手を阻むのは、幼馴染で組織の「会社員」を自認するチュジュンであった……。

 チョン・ジェヨンとチョン・ジュノのツートップとして宣伝されているが、チョン・ジュノは公開前のインタビューで「チョン・ジェヨンさんの映画」と語っており、実際に見てみると<チョン・ジェヨンと個性豊かな仲間たち+チョン・ジュノ>という印象。ヤクザの内部抗争が展開するストーリーの中間に脱獄コメディが挟まれ、チソンとチュジュンの友情以外に、刑務所内での囚人たちの奇妙な連帯感と友情関係、チソンの復讐を支える周囲の人々の義理と人情が描かれて行く。特に、刑務所内の囚人たち--人間味ある死刑囚(イ・ムンス)、脱獄研究家(チュ・ジンモ)、サイコ殺人魔(コン・ホソク)、サイコ殺人魔と心を通わせる囚人(キム・ジェゴン)--の個性豊かなキャラクターは秀逸。各人の人生を描く映画がそれぞれ1本ずつ作れそうに思えるほど見事に役柄を掴んでいる脇役俳優たちの名演と、それを生かした演出も見もの。また、チョン・ジェヨンのアクションが爽快。

 上映前に舞台挨拶あり。チャン・ジン監督とチョン・ジェヨンが出てくると、客席から「同じだ…」「そっくり…」の声が。確かに体型や髪型、雰囲気が似ていて可笑しい。
 チャン・ジン監督:このように公開2週目にまた舞台挨拶ができて嬉しい。
 チョン・ジェヨン:面白い愉快な映画なので、できるだけ大勢の人が見てくれるといいと思う。
 チョン・ジェヨンはもっといろいろなことを言っていたのだが、思い出せない……。ヤクザ映画と思っていたので、「愉快な映画」と聞いて意外の感があったが、確かに愉快な映画だった。

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2006.10.18

[演劇]ヨムジェンイ・ユ氏/염쟁이 유氏

20:00
大学路・トゥレホール1館
가列19番 20,000W
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作:キム・インギョン/김인경
演出:ウィ・ソンシン/위성신
出演:ユ・スンウン/유순웅
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 大学路でロングランを続けている一人芝居。見てみたいと思い始めて1年以上経ち、ようやく劇場へ足が向いた。いつでも見られるロングラン作品はつい後回しになりがちなのだ。劇場へ着いてはたと気がつく。「ヨムジェンイ」って何? 実は芝居のストーリーもよく知らない。パンフレットを買って読んでみると、「ヨムをする人」。「ヨム」って何? 今日、辞書持ってない。
 客席に入って何となく見当がついた。舞台上には上手・下手に葬儀の時に着る白い麻の服がかけてある。「ヨムジェンイ」とは、葬儀に先立ち、死者の遺体を清めて麻布で包み棺に収めるまでの作業を行う人のことだった。

 主人公のユ氏は、代々ヨムジェンイを家業としてきた家に生まれ、自らもヨムジェンイとなった男。そのユ氏が、以前取材に来た記者を招いて、自分は今回のヨムを最後にこの仕事を辞めるからヨムジェンイの仕事をすべて見届けてほしいと頼む。観客は、記者と一緒に伝統文化を学びに見学に来た人たちに見立てられる。
 ユ氏は仕事の手順を説明しながら、自分のこれまでの経験を語る。自分がヨムした暴力団員の幽霊が現れて喜んでくれたこと。近代的な葬儀社との関係。家業を継ぐつもりはなかったが、父に3年間やってみてそれで嫌なら止めていいと言われ、3年で止めるつもりがずっと続けて来たこと。遺産を巡って父親の遺体の前で言い争う家族たちの様子。自分の息子は逆に、子供の頃から「葬式ごっこ」が好きで、自分の反対にも関わらずヨムの仕事がやりたいと言うので、3年間よそで他のことをしてみてそれでもヨムジェンイになりたければやっていいと言ったこと。

 一人芝居は観客を巻き込みながら進められて行く。「記者」に目された男性は、遺体を載せた担架を運ぶのを手伝い、ユ氏と酒を酌み交わす。男女二人ずつの観客が舞台の上で死んだ人を前に言い争う家族の役割を演じたりもする。ユ氏の話を聞いていると、自然にそういう風になってしまうのだ。
 プログラムに出演者のユ・スンウンは「俳優」でなく「광대(クァンデ=広大)」と紹介されている。「クァンデ」とは伝統的な舞踊・仮面劇・人形劇やパンソリ、綱渡りなどの芸人の総称。ユ・スンウンの舞台歴には、演劇でなく韓国伝統の「マダン劇」作品が並ぶ。この芝居は、出演者が観客に語りかけ、観客を巻き込みながら進行して行く「マダン劇」の一人芝居なのだった。

 3年後に戻ってヨムジェンイになると言った息子は、その時になっても帰って来なかった。ユ氏は一人で仕事を続けた。9年後(だったと思う)、ようやく帰ってきた息子はビルの屋上から飛び降りて自殺してしまう。ユ氏が自分の最後のヨムと決めた仕事は、息子の遺体のヨムであった。
 ヨムジェンイという、歴史的には卑賤の業とされた仕事、現代では滅びつつある仕事を全うしてきた男の語りを通して、人生、死、伝統、仕事……様々なことを考えさせられる舞台。素材と発想はイム・グォンテク監督の映画「祝祭」に通じる部分があるが、「祝祭」は死者の周囲の人々の葛藤と和解の祝祭を描いたもの。この芝居は、ヨムジェンイとして人の死を見つめ続けて来たユ氏の人生を通して、一人一人の人間の生と死を考えさせる作品となっている。

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2006.10.14

[映画]いかさま師/타짜

12:10
ソウル劇場2館
下階J列13番 6,500W(サムソンカード会員1,500W割引)
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監督:チェ・ドンフン/최동훈
出演:チョ・スンウ/조승우、キム・ヘス/김혜수、ペク・ユンシク/백윤식、ユ・ヘジン/유해진
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 コニ(チョ・スンウ)は偶然足を踏み入れた花札賭博で一流の「いかさま師」になるためピョン・ギョンチャン(ペク・ユンシク)に弟子入りし、賭場の花チョンマダム(キム・ヘス)と知り合う。いかさまがバレれば右手を潰される裏社会。自分をこの世界に引き入れた男、同郷の「いかさま師」(ユ・ヘジン)、伝説の「いかさま師」アギュ。人生を賭けたコニの戦いは続く。誰が味方で誰が敵なのか……。

 「ビッグ・スウィンドル」(原題「犯罪の再構成」)のチェ・ドンフン監督らしく、チョンマダムを語り手に時系列が再構成され、ヤクザ映画というよりはコン・ゲームの面白さを持つ作風。ぐっと大人びてきたチョ・スンウの魅力に、キム・ヘス、ペク・ユンシクの謎めいた存在感がたっぷり味わえる。韓国には本当にこんな花札賭博の世界があるのだろうか。

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