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2006.10.18

[演劇]ヨムジェンイ・ユ氏/염쟁이 유氏

20:00
大学路・トゥレホール1館
가列19番 20,000W
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作:キム・インギョン/김인경
演出:ウィ・ソンシン/위성신
出演:ユ・スンウン/유순웅
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 大学路でロングランを続けている一人芝居。見てみたいと思い始めて1年以上経ち、ようやく劇場へ足が向いた。いつでも見られるロングラン作品はつい後回しになりがちなのだ。劇場へ着いてはたと気がつく。「ヨムジェンイ」って何? 実は芝居のストーリーもよく知らない。パンフレットを買って読んでみると、「ヨムをする人」。「ヨム」って何? 今日、辞書持ってない。
 客席に入って何となく見当がついた。舞台上には上手・下手に葬儀の時に着る白い麻の服がかけてある。「ヨムジェンイ」とは、葬儀に先立ち、死者の遺体を清めて麻布で包み棺に収めるまでの作業を行う人のことだった。

 主人公のユ氏は、代々ヨムジェンイを家業としてきた家に生まれ、自らもヨムジェンイとなった男。そのユ氏が、以前取材に来た記者を招いて、自分は今回のヨムを最後にこの仕事を辞めるからヨムジェンイの仕事をすべて見届けてほしいと頼む。観客は、記者と一緒に伝統文化を学びに見学に来た人たちに見立てられる。
 ユ氏は仕事の手順を説明しながら、自分のこれまでの経験を語る。自分がヨムした暴力団員の幽霊が現れて喜んでくれたこと。近代的な葬儀社との関係。家業を継ぐつもりはなかったが、父に3年間やってみてそれで嫌なら止めていいと言われ、3年で止めるつもりがずっと続けて来たこと。遺産を巡って父親の遺体の前で言い争う家族たちの様子。自分の息子は逆に、子供の頃から「葬式ごっこ」が好きで、自分の反対にも関わらずヨムの仕事がやりたいと言うので、3年間よそで他のことをしてみてそれでもヨムジェンイになりたければやっていいと言ったこと。

 一人芝居は観客を巻き込みながら進められて行く。「記者」に目された男性は、遺体を載せた担架を運ぶのを手伝い、ユ氏と酒を酌み交わす。男女二人ずつの観客が舞台の上で死んだ人を前に言い争う家族の役割を演じたりもする。ユ氏の話を聞いていると、自然にそういう風になってしまうのだ。
 プログラムに出演者のユ・スンウンは「俳優」でなく「광대(クァンデ=広大)」と紹介されている。「クァンデ」とは伝統的な舞踊・仮面劇・人形劇やパンソリ、綱渡りなどの芸人の総称。ユ・スンウンの舞台歴には、演劇でなく韓国伝統の「マダン劇」作品が並ぶ。この芝居は、出演者が観客に語りかけ、観客を巻き込みながら進行して行く「マダン劇」の一人芝居なのだった。

 3年後に戻ってヨムジェンイになると言った息子は、その時になっても帰って来なかった。ユ氏は一人で仕事を続けた。9年後(だったと思う)、ようやく帰ってきた息子はビルの屋上から飛び降りて自殺してしまう。ユ氏が自分の最後のヨムと決めた仕事は、息子の遺体のヨムであった。
 ヨムジェンイという、歴史的には卑賤の業とされた仕事、現代では滅びつつある仕事を全うしてきた男の語りを通して、人生、死、伝統、仕事……様々なことを考えさせられる舞台。素材と発想はイム・グォンテク監督の映画「祝祭」に通じる部分があるが、「祝祭」は死者の周囲の人々の葛藤と和解の祝祭を描いたもの。この芝居は、ヨムジェンイとして人の死を見つめ続けて来たユ氏の人生を通して、一人一人の人間の生と死を考えさせる作品となっている。

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