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2006年11月

2006.11.04

[演劇]ゴドーを待ちながら/고도를 기다리며

15:00
新村・サンウルリム小劇場
나列15番 24,000W(チケットリンク・ロイヤルパープル会員20%割引)
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原作:サミュエル・ベケット
翻訳:オ・ジュンジャ/오증자
演出:イム・ヨンウン/임영웅
出演:チョン・ククァン/전국환(ヴラジミール)、パク・サンジョン/박상종(エストラゴン)、イ・ヨンソク/이영석(ポッツォ)、チョン・ジヌ/전진우(ラッキー)、チョン・ギヨン/정기용(少年)
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 ヴラジミールとエストラゴンがゴドーを待つ話である。ゴドーについては何も分からないが、二人はとにかく待っている。とりとめもない話をしたり、ポッツォとラッキーがやって来たり、また去っていったり、少年が現れて「今日は行かれないが明日は必ず行く」というゴドーの伝言を伝えたり。

 エストラゴンのパク・サンジョンが上手い。ゴドーを待つことに執着もせず倦みもせず、その時々で新たな一瞬の連続の時間を淡々と生きている感じ。「行くか?」「ゴドーを待たなきゃ」「あぁ、そうだ!」と何度も繰り返されるセリフの「あぁ、そうだ!(참 그렇다!)」が同じように言っているのに決して同じになっていないのは見事。
 睡眠不足で何度か意識が飛んだが、この芝居ではそれが全く影響しない。いつどこで目が覚めても、二人は前と同じようにただゴドーを待っている。一言半句聞き漏らさずに見続けるべき芝居だろうとも思うし、時々眠ってまた起きて見てもいい芝居なのかもしれないとも思う。眠っている間にゴドーが来ない保証はないのだが。

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[演劇]ソウルノート/서울노트

19:30
大学路・チョンボ小劇場
自由席 12,000W(チケットリンク・ロイヤルパープル会員20%割引)
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原作:平田オリザ(『東京ノート』)
翻訳:ソン・ギウン/성기웅
演出:パク・クァンジョン/박광정
企画・制作:劇団パーク
出演:チェ・ヨンミン/최용민、キム・ジャンホ/김장호、シン・ドコ/신덕호、チェ・ソニョン/최선영、キム・ボヨン/김보영、ファン・ヒジェ/황희재、パク・ユンギョン/박윤경、チョ・ジョンファン/조정환、チャン・ソニョン/장선연、ソン・ハンギョン/성한경、ハン・スンド/한승도、ホン・ソヨン/홍서영、チェ・ウク/최욱、コン・ノユン/공노윤、キム・ヒョンジョン/김현정、ソン・ヘソン/송혜선、チョ・ギョンジュ/조경주
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 時は近未来。所は韓国のある美術館の休憩室。戦争の続くヨーロッパでは貴重な美術品を海外に疎開させており、この小さな美術館にも相当数の絵画が送り込まれている。展示室ではベルメール展が行われている。鑑賞の合間に、絵を見るのに飽きて、おしゃべりのため、様々な人が休憩室を訪れ、また去っていく。久しぶりで集まった家族・親戚たち、父の遺産の絵画を寄付するために来た姉弟と弁護士、見合いをして間もないカップル、従軍している青年と彼女、美大の女子学生と友人、美術館の学芸員、学芸員を辞めて田舎に帰った青年。思い思いのおしゃべりから人それぞれの事情がぼんやりと描き出され、見知らぬ者同士のぎくしゃくした会話や意外な再会がさざ波を引き起こしては、また静まって行く。

 舞台はベージュの壁に三方を囲まれたシンプルな部屋。3人掛けのベンチが縦3列に置かれ、上手奥には図録の展示用本棚、その隣には2人掛けベンチ。上手と下手それぞれに廊下へ続く出入口、正面左手に展示室への階段がある。動線はシンプルだが分かりやすく効果的。
 15分前に客席に入ると、すでに舞台上で「休憩」している役者がいる。そのまま前説なしで芝居に突入。携帯に関する注意はどうするのかと思えば、芝居の冒頭で一人の役者の携帯に電話がかかる。そそくさと会話を終えて電源を切ると、それを見ていたもう一人もポケットから携帯を出して電源を切る。休憩室とは言え、ここは美術館。この芝居を見て、客席のお客さんも自分の携帯を切るという段取り。

 以前に原作を読んでいるのだが、こんなに笑える芝居だとは思わなかった。偶然同じ場所に居合わせた人々のぎこちない距離感や会話の間が絶妙。韓国人の観客にもよく受けていたが、韓国の脚本家にこういう芝居は書けないだろうと思う。天然ボケ系役柄のキム・ボヨン(次男の妻)が好演。ぽつっとしゃべる一言のセリフ、ちょっとした動作が客席を動かす。彼女の顔にライトを当てず、顔が見えにくいまま舞台を進行、ラストで初めてくっきりと顔の表情が見える演出が面白かった。
 遠い国で戦争が続いている近未来という設定は、日本では有効だが、韓国では意味が異なってくる。例えば、自発的に軍隊に入ることを決めた男を巡っての「家族とか国とか守るものができて幸せ」というセリフ。日本ではストレートに響くだろうが、兵役の義務がある韓国には言うまでもないこと。だが、気だるい休戦状態が続く現在のぬるま湯状態にカツを入れるセリフに聞こえたりもする。「砂に頭を突っ込んでいるダチョウ」の比喩も、「見たくないものは見ない、見たい構図だけを見る」と付け足されると、どうしたって最近の半島情勢と韓国政府の対応が頭に浮かんでしまう。

 上演中、客席の反応は終始上々だったが、芝居を見終えた後に何が残るのか。リアルな日常はその瞬間にのみ存在し、すぐに消え去ってしまうものなのではないか。
 今日は偶然にもドラマチックな葛藤のない芝居のハシゴ。不条理とリアルな日常はごく近しい間柄にあるのかもしれない。

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