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2009.11.16

[歌舞伎]京乱噂鉤爪

 昨年に続く乱歩歌舞伎の第二弾『京乱噂鉤爪(きょうをみだすうわさのかぎづめ)』。初作『江戸宵闇妖鉤爪(えどのやみあやしのかぎづめ)』は江戸川乱歩の長編小説『人間豹』を脚色した舞台でした。第二作は、同じく人間豹・恩田乱学と明智小五郎を主人公とするオリジナルの物語です。


10月19日(月)12時
国立大劇場
3階12列33番
原案:市川染五郎
脚本:岩豪友樹子
演出:九代琴松(=松本幸四郎)
出演:松本幸四郎、市川染五郎、市川高麗蔵、中村翫雀、中村梅玉、他

 昨年10月『江戸宵闇妖鉤爪』の公演期間中に、第二弾の製作が発表されました。つまり、1年近い準備期間があったわけです。それでなぜ……。

 まず、物語にも人間関係にも奥行きがありません。筋書に主な登場人物が60~80字ほどで紹介されていますが、舞台上でもそれがすべて、という印象なのです。ある意味「分かりやすい」のですが、歌舞伎を初めて見る人にもよく分かる歌舞伎、が目指すべき「分かりやすさ」とは違う「分かりやすさ」です。

 また、舞台を見ていて、セリフのあちこちにひっかかります。
 例えば、第一幕・第一場「きはものや」で、妻のお勝が夫の甲兵衛に言うセリフ。「鏑木様は大のお得意様。これ以上ないっちゅう値段でお買い求めくだはるんやさかい……」。夫は店の主人なのですから、そんなこと百も承知なわけで、店を切り盛りする夫婦の会話として不自然です。もちろんこのセリフには観客への事情説明という役割があるのですが、それならそれでもう少し自然に聞かせる工夫がいくらでもできるはずなのに。
 同・第五場。明智小五郎のセリフ。かつて自分の師匠に言われた言葉をそのまま語る場面です。「お前は人形に己が魂を込めるのではなく、生身の人間の生き様に向き合い……」…… 「生き様」って、あのねぇ。幕末の京都の人形師のぼきゃぶらりーじゃないでしょう。
 同場、幕切れ。恩田と明智が相対する緊迫した場での恩田のセリフ。「黙れ!明智。お前も、何もかもお見通しの自惚れ屋の一人だな」……「何もかもお見通し」なら自惚れるのも当たり前では?って舞台見ながら突っ込んじゃいました。言いたいことはわかります。「自分は何もかもお見通しと自惚れてる手合いの一人だな、お前も」ってことですよね。それを「何もかもお見通しの自惚れ屋」って、恩田乱学の頭が混乱してるふうに見えるんですけど……。

 この手の不自然なセリフ、実は第一作の時にも気になって、台本買って確かめようとしたのですが、売り切れで手に入らなかった のです。今回も舞台を見てたらやっぱり気になり、つい台本買っちゃいました。

 で、最初の話に戻るのですが、準備期間が1年近くあって、台本のセリフが練れてないというのは如何なものかと。稽古期間もそこそこあったでしょうに、このセリフに誰も違和感感じなかったんでしょうか。

 翫雀、梅玉はそれぞれニンに合った役どころだし、衣装や美術は頑張ってるし、もったいないなぁ~と感じた舞台でした。

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