« 体調不良の特効薬@韓国 | トップページ | ソウルメトロから切符が消えた »

2009.11.13

[演劇]笑の大学/웃음의 대학

 このレビューを書いてる途中で、日本の舞台のDVDを見てみました。何度見ても面白いですね~。すっかり楽しんでしまいました。
 同時に、日本版と韓国版の違いも改めていろいろ気がつきました。この記事の後半では日本版との違いについて書いてます。ある種のネタバレですので、実際にソウルで舞台を見るまで知りたくない、という方は途中(「さて」の所)で読むのを止めて下さいね。
 また、最後にプレスコール時の動画をリンクしました。これも見たい方だけどうぞ。


11月1日(日)19時
大学路・文化空間イダ1館/문화공간 이다 1관
2階C列68番(2階後方下手寄り)
作:三谷幸喜
翻訳:キム・テヒ/김태희
演出:イ・ヘジェ/이해제
製作:ク・ボングァン/구본관
出演:ソン・ヨンチャン/송영창、ポン・テギュ/봉태규

Imgp6825

 面白かった~。韓国初演時にも見てるのですが、その時より緊密な舞台になっていました。お客さんの反応も最初から最後までとてもよかったです。ちなみに上の「今日の出演陣(오늘의 출연진)」の写真、この角度でしか撮れなかったのです。他意はありません。この後読んでもらえば分かります。

 作家役のポン・テギュ、映画ではすでにかなりのキャリアを積んでる俳優ですが、演劇は初挑戦。これが素晴らしい出来でした。笑いを創造するという自分の仕事に真摯な若手劇作家という役を見事に自分のものにして演じてます。検閲官にたこ焼きやらカラスの巣箱やら差し出して何とか良い関係を築こうとする努力や、劇団の座長を立てて脚本を書いている苦労に、自然と共感できるのです。これは、実年齢29歳(81年生)、初の演劇舞台というポン・テギュ本人の若々しさ、初々しさによるところもあるのでしょう。
 最後に召集令状が来たと告げる場面が、しみじみと切なかったです。

 検閲官のソン・ヨンチャン。こちらはもう言うことなしです。映画でも活躍してますが、この人の真価は生の舞台にあるとつくづく思いました。身体が切れて、セリフは流暢、ゆえに演技の間が抜群。見ているだけで楽しくなっちゃう役者さんで、今回も持ち味十分に発揮してました。警官役(名前はオオガワラでなくナカムラ)で上手下手と走り回る場面、誰がやってもそれなりに面白いでしょうが、ソン・ヨンチャンの場合、身体の動きやポーズで笑えるのが最高。この人のために書かれた場面かと思えるほどです。

 さて、韓国語版「笑の大学」、元の台本をかなり忠実に韓国語翻訳してますが、部分的には翻案されたり省略されたりしてます。
 そもそも「貫一お宮」が韓国人には通じないわけで、代わりに「ロミオとジュリエット」にハムレットが登場するという珍妙な話になってます。喜劇や恋愛物はダメだけど、悲劇や復讐物はOKという理屈。
 「お国のために」というセリフを入れろ、という検閲官の注文は、「天皇陛下万歳(천황폐하만세)」を3回入れろ、に変わってます。この無理難題に対して、作家は「天皇陛下万歳」という名前の馬を登場させて対抗します。ポン・テギュが修正した台本を演じてみせるのですが、その動作と間合いが抜群。
 「誰か馬を準備してくれ」「天皇陛下万歳、天皇陛下万歳」「天皇陛下万歳、さぁ、出発だ!」
 この瞬間「馬の名前かよ!」って分かって、客席爆笑。ちゃんと演技で笑わせてくれるところが嬉しいです。ポン・テギュ、こんなにうまいとは。芝居の方はさらに、検閲官が馬の名前が長過ぎると指摘すると、作家はすかさず「天皇」「陛下」「万歳」と3頭の馬を登場させる始末で、これまた大爆笑でした。この翻案アイディア秀逸。
 他の小ネタでは、今川焼はたこ焼きに、カラスの武蔵はただの「カラス」になってます。また、座長の持ちネタ「猿股失敬」と座布団回しは、「差し歯が落ちる」「剣を飲む曲芸」と設定されてます。このネタが面白くないことは作家も承知しているけれど、座長が気分よく演じてくれれば芝居全体が良くなるのだ、という流れは同じ。

 舞台装置、日本版と上下が逆です。上手側に作家が出入するドアがあり、テーブルを挟んで、下手に検閲官、上手に作家が座ります。下手側には階段があって、検閲官が階段から登場することも。特に、検閲官の最初の登場が階段を上から下りてくるというのは、冒頭の両者の立場を象徴していて、面白い演出だと思いました。
 また、上手ドアの外の廊下が透けて見えるようなセットが組まれていて、一度だけ、作家・椿と別の作家らしき人物とがすれ違うシーンがあります。椿と同様に検閲に悩まされている劇作家が他に何人もいることを想像させる場面で、これも「ほぉ~」という演出でした。

 全体として、小ネタのギャグが日本版ほど効かない分、芝居の流れに集中できる舞台になってると思いました。役者の演技力を堪能できた幸せな1時間45分でした。

 最後に、お待たせしました、韓国版の映像です。2分21秒。検閲官アン・ソクファン、作家ポン・テギュ。何と「天皇陛下万歳」の件です。何度見ても笑っちゃう~。本番のポン・テギュの演技は、この時よりさらに磨きがかかってました。

韓国版「笑の大学」プレスコール映像
(初めに15秒の広告映像が入ります。動画がスタートしない場合はリロードしてみて下さい。)

☆関連記事
 演劇熱戦2の余韻

|

« 体調不良の特効薬@韓国 | トップページ | ソウルメトロから切符が消えた »

演劇」カテゴリの記事

韓国」カテゴリの記事

コメント

nanakoさん

 日本版の「猿股失敬」は何度も演じられますけれど、「差し歯」は検閲官が神父の衣装で階段から登場する時に1度それらしい芝居をしてみせるだけ、「剣を飲む」は「座布団回し」同様、会話の中に出てくるだけです。
 座長はこれができればご機嫌なので他の役者ものびのびと芝居ができる、という話になるので、あぁ、これが「猿股失敬」と「座布団回し」の代わりなのね、と分かるという感じです。

 ハムレットは 햄릿 なんですよね。いきなり耳で聞いたら分かりません。

 確かに初演の時より笑いが多くなってました。芝居の流れがよくなったかなぁと思います。
 初演時には小ネタのギャグがうまく機能せずに、芝居の流れがブツブツ切れてた感がありましたが、今回はそれがありませんでした。

 『君となら』、演出イ・ヘジェ、長女の恋人役でソン・ヨンチャン、イ・スンジェのダブルキャストのようですね。この役には若すぎるソン・ヨンチャンがどんな役作りしてくるか楽しみです。

投稿: なな(管理人加藤) | 2009.11.15 00:00

初演を昨年観て、先月、アン・ソックァン+ポン・テギュヴァージョンを観てきました。
日本のオリジナルも観ていたので、座長のアオカンの持ちネタはどうなっているのか気になりつつわからず・・・。

>座長の持ちネタ「猿股失敬」と座布団回しは、「差し歯が落ちる」「剣を飲む曲芸」と設定
だったのですね!
何しろ初演の最初の鑑賞時は(2回観ました)
「ハムレット」も「ヘムリッ」・・・何???状態だったくらいです。
でも役者さんお二人の熱演と丁寧な演出から伝わってくるものは大きくて感動の余韻に浸りながらトンスンアートセンターを後にしました。
今回は、初演に比べると軽快というか、笑いが多い演出になっていたような印象です。

演劇熱戦3では三谷幸喜さんの「君となら」が上演されるのですよね。
演出は同じイ・ヘジェ氏なんですね。
「君となら」は未見なのですが、予習して観に行きたいと思っています。ソン・ヨンチャン氏がまた登場なんですよね。楽しみです!

投稿: nanako | 2009.11.14 20:56

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/92545/46751473

この記事へのトラックバック一覧です: [演劇]笑の大学/웃음의 대학:

« 体調不良の特効薬@韓国 | トップページ | ソウルメトロから切符が消えた »