人気と知名度のある芸能人が次々とキャスティングされている最近の韓国ミュージカル。その現状を批判的にとらえた記事です。目新しい指摘ではありませんが、よくまとまった内容なので、全文翻訳で紹介します。
◆「ミュージカルは主役が三、四人」 スター・マーケティングが招く畸形キャスティング
京郷新聞 2009.12.06
(以下、記事全文の日本語翻訳です。)
年末のミュージカル市場は名高いスターたちが大挙ラインアップされている。しかし、スターを前面に押し出した作品の主人公は大部分が3人(トリプル)または4人(クァドラプル)だ。過熱するスター・マーケティングの結果である。
『ブロンドが凄過ぎよ』『ヘアスプレイ』『ホントにホントに好き』の主人公は3人が、『モーツァルト』『殺人魔ジャック』『ヘドウィグ』は4人が交代でつとめる。
『ブロンドが凄過ぎよ』は「少女時代」のジェシカ(제시카)、『ヘアスプレイ』はパク・キョンイム(박경림)、『ホントにホントに好き』はシン・エラ(신애라)、『モーツァルト』は「東方神起」のシア・ジュンス(시아준수)、『殺人魔ジャック』はアン・ジェウク(안재욱)、『ヘドウィグ』はユン・ドヒョン(윤도현)が「看板」である。しかし、彼らが主人公として舞台に立つ公演は、2~3日に一度上演されるだけだ。
このような現象は、米国ブロードウェイと英国ウェストエンドというミュージカルの本拠地では見出すことが難しいというのがミュージカル界の指摘だ。スンチョンヒャン(순천향)大のウォン・ジョンウォン(원종원)教授は「英米の市場では長期公演をしながら基本的にオリジナル・キャストで行い、その俳優に問題が起きた時、カバーやアンダースタディ(第二、第三の予備配役)を起用するのが原則」だと話している。チョンガン(청강)大ミュージカル学科のチン・ジョンフン(진정훈)教授も「俳優たちの練習も時間を3分の1または4分の1に分けてすることとなり、舞台の完成度が落ちる」と述べている。
製作者たちがスター・マーケティングを好むのは、収益のためだ。ソン・スンファン(송승환)PMCプロダクション代表は、「初演作品の場合、チケットを捌ける俳優のキャスティングが必須」とし、「スターのスケジュール調整を考えれば、トリプル以上のキャスティングにならざるをえない」と漏らした。実際、スター・マーケティングの効果は、近頃『モーツァルト』のシア・ジュンスのキャスティングで証明された。シア・ジュンス出演分2回のチケット6000枚が1時間30分で完売したのだ。『ブロンドが凄いの』もジェシカの出演分が最も早く売れた。
このような現象は、俳優層が厚くないミュージカル市場であまりに多くの作品が同時に上演されることで、加速化している。
キム・ヨンヒョン(김용현)ソウルミュージカルカンパニー代表は「短期間にミュージカル市場が拡大し、俳優の数は増えたが、主役を演じられる力量のある俳優層は非常に薄い」とし、「基本的に、ファンクラブを持っている俳優が出ればチケットが売れるため、製作者が出血覚悟で彼らに交渉する」と言う。
しかし、トリプル、クァドラプルのキャスティングは結果的に「わが身を滅ぼす」だけと指摘される。ウォン・ジョンウォン教授は「スター・マーケティングは短期的には効果をあげるかもしれないが、中長期的には毒」であると述べ、「製作者が利益構造のために長期的な見通しで作品を創り、俳優も安定した収入減を確保できるように、国内でも6ヵ月以上の長期公演システム環境が整えられるべき」と主張している。
パク・チュヨン(박주연)記者
韓国ミュージカル、これだけ公演数が多く盛り上がっているのですから、歌手やコメディアンなどが参入してくるのは当然だと思います。活躍の場を広げたい芸能人とメディアに流せる話題作りをしたい製作者側との思惑が一致して、人気芸能人がミュージカルに出演、というパターンはこれまでにも数多くありました。もちろん製作者側は、話題になる→チケットが売れる、というセンを狙っているわけです。
そうしたキャスティングに対して、私は、製作陣が認めるだけの力があるなら一度やってみればいい、と思ってました。その上で、素晴らしい舞台を見せてくれれば今後が楽しみなミュージカル俳優として大歓迎しますし、ミュージカルに向いてないと分かればお引き取り願うだけのことです。実際、これまでの韓国ミュージカル界には、そんな雰囲気がありました。
しかし、最近はチケットが確実に捌けることを露骨に計算してキャスティングする、という点で、これまでの傾向とやや違ってきているのですね。「ファンクラブを持っている俳優が出ればチケットが売れる」。ファンクラブの会員数と劇場のキャパとステージ数と考え合わせて……。う~ん、どっかで聞いた話のような。ベンチマークしてるんでしょうね。ビジネスとしては当然ですが。
スター・マーケティングもですが、最近の韓国ミュージカル、「イケメン・マーケティング」も目立ってるのですよね。ポスターの撮り方とか、明らかにその線を狙ってます。
スターのファンを呼び入れることで新たなミュージカル・ファン層を形成しようという中・長期的な戦略もあるのかもしれませんが……ファンは目当てのスターが出演してない舞台は見ないと思います。(毎月歌舞伎公演見てると、しみじみ思います。)
ウォン・ジョンウォン教授の主張「6ヵ月以上の長期公演システム環境」、実現可能なのでしょうか。現状では難しいですよね。今は、市場規模と製作体制と公演数とのバランスが取れてないですから。
繰り返しますが、いろいろな人がミュージカルに挑戦するのは歓迎です。一度やってみればいい。でも、力不足と分かったら、その後は役をつけないで~。舞台の質を落とさないで~。
韓国ミュージカルの魅力を大切にしてほしいです。目指せ、ホントのブロードウェイ!
さて、この先は余談です。
東方神起のジュンスが出て、「6000枚が1時間30分で完売」。韓国のチケット争奪戦、まだまだ甘いですねぇ。日本だったら瞬殺ですよね?
3段落目「看板」と訳した言葉、元の韓国語は「顔マダム(얼글마담)」です。その人目当てにお客が通うようなバーのママ、から転じて、ある分野や集団を代表する人、の意味で使われます。日本語だったら「球界の顔」「劇団の看板俳優」というニュアンスの語。でも、「顔マダム」って面白い表現ですね。あ、「看板俳優」も外国人が聞いたら面白いのかな。
5段落目「チケットを捌ける俳優」、元は「チケットパワーのある俳優」です。「チケットパワー」そのままでも意味は通じるような気がしますが、普通に使う日本語ではないですよね。テレビの世界では視聴率の取れる人を「数字持ってる」と言うそうですが、「チケット買ってくれるファンを確保している」って日本語でぴったりの言葉があるんでしょうか?
日本から韓国の舞台を見に行く立場としては、トリプル、クァドラプルは辛いですね。狙ったキャストに合わせてソウルへ飛べるとは限りませんから。主役によって舞台の出来が大きく違うなんてのは、ホント、勘弁してほしいです。
今のところ特定のスター限定のようですが、前売りで完売も困ったもんです。劇場行けば当日券で見られる、というのが韓国ミュージカルの魅力の一つなんですよね。
製作費、高騰してるのだろうなぁ……。どこから資金を引っ張ってきてるんだろう……。
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