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2010.01.12

[歌舞伎]正月歌舞伎座 夜の部

 久しぶりの、そして恐らく最後になるであろう歌舞伎座の中村雀右衛門を観るべく、三日目・1月4日のチケットを取りました。初日から数日は出演するだろう、御社日(劇評家の観劇日)は三日目だろう、その日は出演の可能性がより高いだろう、と予想しての選択でした。
 結果、三日目=御社日は当たりでしたが、雀右衛門は初日から休演でした。
 11日夜時点の情報で、初日から代役を勤めている魁春はあくまで「代役」、体調がよくなれば雀右衛門が出演する、実際どうなるか現時点では分からない、とのことです。


1月4日(月)16時40分
歌舞伎座
1階桟敷席・東7-1
<再見>
1月11日(月・祝)16時40分
3階2列17番

『春の寿』
 雀右衛門出演のための新作長唄舞踊です。歌詞も振りも、雀右衛門仕様。
 幕が開くと、梅玉と福助の踊り。その後、大セリで魁春と若手役者たちが登場。魁春は、中央の一畳台の上の蔓桶に腰をかけた形。
 魁春、4日は蔓桶に座ったまま、最後まで上半身のみの振りでした。三日御定法の代役のお約束に従い、本役の雀右衛門がするはずだった通りの振りでしょう。魁春の行儀のよさは本当に立派だと思います。その一方で、雀右衛門、もうこれしか動けないんだな~と、舞台にいない雀右衛門に想いを馳せた舞台でした。
 11日再見の際は、開幕前に「雀右衛門休演につき代役魁春」のアナウンスが入りました。セリ上がりの後、魁春は立ち上がって一畳台から下りて、本舞台中央での所作。居所はほとんど変わらず、上半身主体の振りで、踊り終わると蔓桶へ。幕切れは蔓桶から立ち上がり、その場での所作でした。
 念のため、幕間に場内スタッフの方に、魁春は「本役」になっているのかどうかを尋ねたところ、冒頭マクラに記したようなお返事をいただきました。

『菅原伝授手習鑑』車引
 桜丸の中村芝翫は82歳で初役、時平の中村富十郎は81歳で初役。歌舞伎って奥が深いです。
 この初役、芝翫の桜丸が立派の一言。むきみ隈の大きな顔も立派、柔らか味を内に秘めた力強い芝居も立派。荒事の桜丸です。「車引」の桜丸ってこういう役柄だったんですね。桜丸が曽我五郎や助六と同じ「むきみ隈」をとることに、初めて納得が行きました。今まで見て来たナヨナヨ桜丸は何だったんだろう……。
 述懐のセリフも素晴らしく、後の「賀の祝」の悲劇を予感させる芝居でした。
 梅王の吉右衛門、「来い~」の一声で軽やかに花道を踏んで入る様が、これまた「子供の心で」言われる荒事の梅王。こちらも「賀の祝」の喧嘩場を想起させる稚気あふれる芝居でした。
 松王丸の幸四郎も堂々たるもの。
 この三人でこのまま「賀の祝」を観たかったです。

 4日は桟敷で斜め横からの見物でした。この演目を正面から観たくて、11日の再見となりました。

 時平の富十郎は11日の方が元気だったような。歌舞伎座の場内に朗々とセリフが響き渡りました。藍隈を取らないのは昔の例を調べての工夫だそうです。こっくりした古風な趣の三つ子と、藍隈も舌出しもない妖気溢れる時平の対照、大顔合わせの大舞台でした。

『京鹿子娘道成寺』道行から押戻しまで
 最初から最後まで、丁寧に踊ってました。どの場も水準以上というのが勘三郎の凄いところです。逆に、この場は勘三郎がピカイチと際立つところがないのが残念でもあるのですが。
 押戻しの団十郎、団十郎らしい大らかな明るさがやや欠けていたような。4日も11日も。それでも、正月早々に団十郎の押戻しを観れば、めでたく清々しい気分になれて、嬉しいものです。

『与話情浮名横櫛』見染・源氏店
 見染の場、与三郎の染五郎、お富の福助、よかったです。互いに一目惚れした「見染」の瞬間、周囲の時間が止まり、二人だけの世界になってる感じがよく出てました。錦之助、京妙、芝のぶの芝居がいいのも一因でしょう。

 源氏店。染五郎、姿がいいですね~。ただし、セリフは妙に間延びしてます。4日は何だかダレちゃって所々で居眠りしちゃいました。11日は少しよくなってましたが、たっぷり過ぎるセリフが数か所。与三郎は江戸っ子なんだから、歯切れよくトントンと行ってほしいところ。
 この場の福助は、なぜか玉三郎が何度も頭に浮かびました。鼻にかかった発声のセリフ回しが似てるのかしらん。
 弥十郎の蝙蝠安がすごくいいです。この場を観てるだけで、なるほど、タカリってこうやれば相手からお金を引き出せるんだ、と勉強になるほどに。煙草をねだるのも、これまでは、一服と言って煙草入れ一杯に貰ってるものとだけ思ってました。でも、弥十郎の蝙蝠安は、ここで煙草を出させることで、続いてお金を出すのにも抵抗が少なくなるように仕向けてるのだと感じました。蝙蝠安だけでも十分面白く見応えありました。
 
 幕切れは、多左衛門が自分の兄と気づいたお富の所へ与三郎が飛び込んできて、「生涯お前を離さねぇぞ」と抱き合って幕。
 幕切れのこのセリフ、個人的にはあまり好きでないパターンなのですが、染五郎には似合ってました。

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 歌舞伎座さよなら名物9(桟敷席)

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