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2010.01.10

[演劇&映画]検事と女先生/검사와 여선생

 ソウル観劇旅行2日目。当初マチネはミュージカル『春の目覚め(스프링 어웨이크닝)』を見るつもりでした。裏の『笑の大学(웃음의 대학)』の検閲官がアン・ソクァン(안석환)になっていることを確認済み。お目当てのソン・ヨンチャン(송영창)、この冬、『春の目覚め』と『笑の大学』を掛け持ち出演中なのです。
 が、ふと『笑の大学』は釜山でも公演中と気づきました。慌てて釜山公演のキャストをチェックすると、検閲官はソン・ヨンチャン。釜山に行ってるなら、『春の目覚め』には出てこない……。がーん。
 代わりに何を見ようか、とりあえず夕方のチケットを確保しておこうと、東崇アートセンターへ行き、この公演を見つけました。そう言えば、ネットのニュース記事で話題になってるのを読んだ覚えが……。
 どんな公演なのかはっきり分からないまま、珍しいもの見たさでチケット買いました。キャッチコピーは「この時代最後の無声映画と演劇の絶妙な出会い」。


12月26日(土)15時
東崇アートセンター・コクトゥと遊ぼう(동숭아트센터 꼭두랑 놀자)
全自由席(前方センター)20,000W
演出:コ・チュンギル고충길、
出演:チャン・ウジン(장우진)、アン・テラン(안태랑)、キム・ドンイル(김동일)、カン・ジヘ(강지혜)、イ・アラ(이아라)、ムン・サンヒョン(문상현)

 「コクトゥと遊ぼう」は東崇アートセンター5階、小劇場の隣に作られた小さなホールです。場内に入ると、手前3分の1に階段状の仮設客席が50席程、奥3分の2は床そのままで舞台、背景にスクリーン。舞台上手には机と椅子があります。

 この公演、韓国映画史上最後の、かつ、フィルムが現存する唯一の無声映画『検事と女先生(검사와 여선생)』(1948年作)を弁士(チャン・ウジン)付きで上演するというものでした。現存フィルムの欠落部分数か所、16分間分を役者が演じて繋ぐという映画と演劇のミックス上演です。上手の机と椅子が弁士の定位置。

 いや~、貴重な経験ができました。

 弁士付きの無声映画を見られるとは。初体験です。弁士の語りって映像とこんな風に絡むんだ~と目から鱗でした。何となく、弁士は俳優のセリフを語るものと思いこんでいたのですが、風景を映したイメージショットで登場人物の心情を語ったり、映像とつかず離れずで観客に直接語りかけるんですね。同じ映画でも弁士によってかなり異なった印象になるはずで、無声映画全盛時代に「人気の弁士」がもてはやされた理由が実感できました。

 この「検事と女先生」は弁士に人気のあった作品だったそうです。実際に弁士付きで映像を見てみると、なるほど、弁士たちにとっても語りやすい作品(つかず離れず自在に語れるとか、観客の感動を呼び起こしやすいとか)とそうでない作品があるだろうなぁ、なんてことも理解できました。
 無声映画とその後の音声アリの映画では、映画の作り方も「良い作品」の基準も、全く違ってくるのでしょうね。

 また、韓国映画史上最後の無声映画、フィルムが現存する唯一の無声映画という貴重な作品を、所々欠落部分があるとはいえ、最初から最後まで通して見ることができたということ自体が、得難い体験になりました。
 フィルムの欠落を繋ぐ演劇部分がどうしても「間に合わせ」に見えてしまうので、欠落部分も弁士の語りだけでやるという手もあったかとは思います。でもそれでは単なる「上映会」になっちゃいますね。

 この公演、会場をかえて2月28日まで上演してます。公演データは こちら。昔の映画に興味ある方にお薦めです。

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 以下、映画のデータとあらすじを記しておきます。

『検事と女先生(検事女先生)』
1948年製作・無声映画
製作:ユン・サンリョン(윤상룡)
シナリオ・監督:ユン・デリョン(윤대룡)
撮影:チャン・ファン(장환)
原作:キム・チュングァン(김춘광)
出演:イ・ヨンエ(이영애)、イ・オプドン(이업동)、チョン・ウン(정웅)

 1948年、ソウルのある町。早くに両親を亡くし、病気の祖母の世話をしながら貧しい暮らしの中で勉強を続ける小学生がいた。彼を不憫に思い、物心両面で援助する女性教師ヨンエ。
 歳月が流れ、幸福な結婚生活を送っていたヨンエは、ある日、脱獄囚をかくまうことになる。彼の気の毒な事情を聞いて、父と娘の再会を手助けし、彼を自首させるヨンエ。
 ところが、ヨンエは出張から戻った夫から脱獄囚をかくまったことで誤解されてしまう。興奮した夫は刃物を持ち出してヨンエを殺そうとし、転んだ弾みに誤って自分を刺してしまう。
 殺人事件の被疑者となったヨンエは、起訴されて裁判にかけられることになる。ヨンエの事件を担当した検事は、かつて彼女が援助してあげた生徒だった。彼は貧しい暮らしから立派に出世して検事となっていたのであった……。
 検事は事件が偶発的な事故であったことを明らかにし、ヨンエは無罪放免となる。彼はヨンエを自分の邸宅に招き、これからは自分が妻と共に恩師であるヨンエを支えることを約束する。

 単純なストーリーですが、弁士の熱弁で感動的な物語になってました。弁士なしで映像だけ見たら、「ふ~ん」って思ってオシマイだったでしょう。弁士あっての無声映画。当たり前だけど、それが分かった公演でした。

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コメント

阿青さん

 戦前は国内公演なんですよねぇ。

 演劇の近代史は韓国内でかなり研究盛んだと思います。研究書も出ていたような。

投稿: なな(管理人加藤) | 2010.01.27 01:37

あ、あれれ…、一瞬『婦系図』と『滝の白糸』の区別がつかなくなったぞ…。
よくあること、よくあること(;´▽`A``


日本占領時代に新派は朝鮮半島へも巡業を行っているんですよね。当時は“国内公演”として。
今でも「シンパ」という言葉が日本とほぼ同じ意味で使われていて、影響は大きいと思うのですが。
このあたりのことをもっとよく知りたいんですが、思っているだけで道は遠いです。
今のところの私には日本の新派史の方からアプローチするしかありません。

投稿: 阿青 | 2010.01.26 20:50

阿青さん

 そうそう、新派です。『滝の白糸』は日本で何度も映画化されてますし、影響受けても不思議はないですよね。さすが、阿青さん、鋭い。

 と書きつつ、なぜか『婦系図』の方が思い浮かんじゃって、「別れろ切れろは芸者の時に」が頭の中ぐるぐる回ってます。(^-^;

投稿: なな(管理人加藤) | 2010.01.25 13:59

これって、そういう内容だったのですね。
タイトルから「リタと大学教授」みたいなストレートプレイを連想していました(←安易だ)
昔の映画、弁士付き…見たかったわぁ!

ところでこの映画のストーリー、なんとなく泉鏡花の「滝の白糸」を連想させられます。
“新派”ですね。

投稿: 阿青 | 2010.01.25 04:29

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