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2010.08.07

就活とレポート

 昨日の記事に補足。その3。就活の話です。

 ちょうど読売新聞に「大卒2割、就職も進学もせず…10万人突破」なんて記事が出たものだから、ネット上のあちこちで就活と新卒採用のことが話題になってます。茂木健一郎氏の記事 一連のツイートは私も昨日読んでました。

 今日になって、内田樹氏のブログ記事を読んで、あぁ、これだ、と思いました。内田氏は現在の就活、雇用システムが「日本の若者たちを『組織的に不安にさせること』を結果として生み出している」こと、「『ふつうの子どもたちが絶えず査定にさらされることによって組織的に壊されている』ことの危険」を指摘しています。

 そう、私が今年のレポートの末尾の「お詫び」に引っかかったのは、そこでした。ある学生のレポートに、「恥ずかしいのですが、まだ就活中で云々」とあったのが気になっているのです。周囲が次々と就職を決めて行く中で7月中旬まで就活を続けていることも、そのために講義の欠席が多くレポートや試験への取り組みが自分でも満足できるものでないことも、それを先生に対して「お詫び」しなければならないことも、「恥ずかしい」と感じざるをえない。
 就職が決まらない焦りや不安に加えて、まともに講義に出席できていれば必要のない「お詫び」に神経をすり減らして「恥ずかしいのですが」とレポートに追記するしかない学生の状況、心理状態って、どう想像しても健全とは言いがたいと思うのです。

 私は非常勤の講師で、学生の卒業後の進路を心配する立場ではないのですが、全学年・全学部学科の学生が受講する大人数の講義を担当しているために自ずと見えてくることもあるわけで。
 いくつかの「お詫び」に目を通しながら、今年のレポートから去年までとは違う危うさを感じたのでした。

 レポートの序論にこんなこと書いてきた経済・経営関連の学科の学生がいました。経営という視点から歌舞伎を見るというレポートのテーマを立てたのだが、実際に劇場へ行って舞台を見たら、これは経済や経営とは異なる原理の上に成り立つもので、金融システムが崩壊しても歌舞伎は存続するような気がした、と。

 私の講義は彼ら彼女らの役に立ってるのでしょうか。「現状」や「常識」を再考する糸口を掴んでほしいな、と思っているのですけれど。

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コメント

阿青さん

 コメントありがとうございます。(o^-^o)

 特に歌舞伎のような「芸能」の場合、源をたどれば「出雲の阿国」であり、「天鈿女命(あめのうずめのみこと)」であり、なのだと思うのですよね。

 ひとの身体の内から沸き起こってくる根源的な生命力の表出なのであって、それでお金を稼ごうとか、プロになって食べていこうとか、そういうことは二の次三の次。

 金融システムが崩壊しては困るのですが、もし万々一日本の社会を支えてるようなシステムが崩壊したとしても、歌舞伎役者はいつものように舞台を勤めると思うし、私もそんな時こそ舞台を観に行くだろうと思います。
 戦争中、空襲で今日明日にも死ぬかもしれないと思っていた人たちが、毎日、歌舞伎座に集っていたように。

 金融システムが崩壊しても歌舞伎は存続する、という学生の直感は、きっと正しいです。多分にワタシの願望を含んだ見通しですが。
 学生が、「合理的な経営判断」で計れないものが人の生きる力を支える(場合もある)ということを、肌で感じ取ってくれたのであれば、嬉しいな、と思ってます。

 それはさておき。
 あぁ、やっぱり歌舞伎座は常に存在していてくれないとダメだ~。演舞場に集うんじゃ、カッコつかない。(^-^;

投稿: なな/加藤敦子 | 2010.08.08 10:24

>実際に劇場へ行って舞台を見たら、
>これは経済や経営とは異なる原理の上に成り立つもので、
>金融システムが崩壊しても歌舞伎は存続するような気がした.

利益があがらないことには仕方がないのですが、利益だけを追求していたらとてもやっていられないところが演劇活動には必要ですよね。
それでもやりたくて続けていく人たちがいる。
だからあやういし、だから強い。
若い学生さんが演劇活動の本質をすらっと(でもないのかもしれないけど)導き出したことに、なんだかとっても感動しました。

投稿: 阿青 | 2010.08.08 01:09

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