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2010.11.12

[演劇]朝ドラ/아침 드라마

 面白かった! かなり詳しくストーリーを記しましたので、これを読んで面白そうと感じた方はぜひご覧になってみてください。役者の演技で十分芝居を楽しめると思います。

 作品タイトルは、普通に訳せば『朝のドラマ』。パンフレットのシノプシスを読んで、『朝ドラ』としてみました。過激に荒唐無稽に展開していくTVドラマ(日本だったら昼ドラ?昼メロ?)のような物語、という意味が込められているのですね。皮肉なタイトルです。

 作・演出のパク・クニョンはパク・グニョンの表記の方が普及してるのでしょうか。現地発音に基づく原則的表記は「パク・クニョン」です。

 ……と書いておけば、「パク・グニョン」「朝のドラマ」で検索した方もここに辿り着けるはず。ようこそ~。


『朝ドラ(아침 드라마、朝のドラマ)』
11月7日(日)16時、19時(再見)
大学路・ゲリラ小劇場(개릴라극장)
作・演出:パク・クニョン(박근형)
出演:ソ・イスク(서이숙)、パク・ワンギュ(박완규)、キム・ヒョスク(김효숙)、キム・ジュワン(김주완)、シム・ジェヒョン(심재현)、キム・ジュホン(김주헌)、他

 まずは、パンフレットのシノプシス全文の日本語訳です。

     :;;;:+*+:;;;:+*+:;;;:+*+:;;;:+*+:;;;:+*+
 雲の国、天国の上にある家族がいました。お父さんは小さな革工場を運営しています。お母さんは情に厚い良妻賢母です。善良でまじめな一人娘は大学院でデザインを専攻しています。彼らは幸せです。
 そんなある日、おとうさんの工場が不渡りを出しました。借金の督促に苦しんだおとうさんは、悩んだ末、結局夜逃げ。夜の町を転々として、ゴミ収集車に轢かれて死にました。
 当然、家は借金の山を背負いました。お母さんはにわかに家政婦として働くことになりました。娘はデザイナーの夢をしまい込み、デパートの靴みがきのアルバイトをすることになりました。お母さんと娘は貧しく苦しい生活でも、笑いながら互いに支え合っています。
 そんなある日、デパートの社長である息子が、業務巡察にやってきて、この娘の靴磨きの腕前に惚れました。冷徹なエリート社長といつでも明るく善良な娘は急速に恋に落ちました。互いに結婚の約束をし、社長の両親に会いました。
 しかし、デパート社長の両親は、この貧しい娘との結婚に反対しました。娘が妊娠してようやく二人の結婚を了承しました。
 娘はデパートのトップデザイナーとして働くことになり、幸福な結婚生活を送っている時、急に倦怠期になります。娘は同僚の男性職員との不倫にはまり、不倫を知った夫は警察に訴えに行く途中、ゴミ収集車に轢かれて死にます。
 いかがですか、この物語……荒唐無稽でしょう?
 さぁ、では我が町の物語をご覧になってみますか? 朝ドラ…… 
     :;;;:+*+:;;;:+*+:;;;:+*+:;;;:+*+:;;;:+*+

 この内容は、語りとスピーディな芝居とで、開演10分で終了します。客席で唖然としました。これから80分何やるのよ?って。
 幕が下りてみれば、この部分が後の本筋の背景説明かつ導入部になっていました。面白い仕掛けですね。「前回までのあらすじ」という位置付けでしょうか。
 実際に舞台上で演じられる芝居は、上記シノプシスを裏切っています。例えば、父の死後、お母さんは簡単に娘と縁を切っちゃうし、娘は「このデパートのCEO」と聞いた途端に「靴磨きの腕」を発揮して金持ちの息子を捕まえにかかるし。息子の父親も不倫相手の同僚も「靴磨きの腕」で落としていきます。どこが真面目で善良なんだか。客席爆笑。

 その後の本編(?)の物語は以下の通りです。多分。記憶違いや誤解があったらごめんなさい。

     。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚
 酒場で舅(パク・ワンギュ)と男(キム・ジュホン)が酒を飲んでいる。世間を騒がせている連続放火犯の話題になるも、舅はその事件を知らなかった。毎日メディアが大騒ぎしているのに。そんな舅の息子は近く結婚式を挙げる予定。舅は男を結婚式に招待する。男は舅に先生が死んだことを話す。旧知の間柄と思っていたのに、あれ?二人は初対面?

 息子(キム・ジュワン)は妊娠している嫁(シム・ジェヒョン)への愛情が冷めている様子。それでもお腹の中の子が男の子なので喜んでいる。息子の祖母は最近亡くなり、祖父は顔にひどい火傷を負っている。連続放火犯による火事が原因。しかし、舅にはその記憶がない……。

 舅は、妻である姑(ソ・イスク)に促されて先生の家を訪ねる。先生に貸した金を返してもらうため。ところが、先生の娘は逆に舅の借用証を見せて返済を迫る。舅には金を借りた覚えがないのだが……。

 嫁と姑が検診に訪れた病院で、院長(キム・ヒョスク)が赤ちゃんは女の子と言い出して二人はびっくり。しかし、やはり男の子だったよう。安心したところへ、連続放火犯が押し入ってくる。二人は必死で逃げる……。

 結婚式当日。病院の放火は院長の活躍で事無きを得、院長は結婚の立会人として招かれている。立会人の「誓いますか?」という問いかけに、「はい」と答えたのは新郎でなく司会者。新婦の指に指輪をはめたのは姑。新郎である息子は死んでいて、故人と娘との結婚式が予定通りに執り行なわれていたのだった。しかし、舅は息子の死を認識していない……。
 式の最後に、息子が挨拶をする。両親への感謝と不孝を詫びる言葉を述べ、父親の無関心に警告する。いつか火が来るのに、もうそこまで近づいて来ているのに……と。

 酒場で舅が酒を飲んでいる。放火犯が現れ、ポリタンクの可燃物を床に撒き、舅の頭から浴びせ、火のついたライターを掲げて……。
     。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚

 とても面白かったです。物語の展開が過激でスピーディ。それを役者の演技力がきっちり支えています。
 場面ごとに驚きの事実が明らかになるのですが、それらはすべて舅の家族への無関心が原因。観客は、まず舅の立場から人間関係や状況を把握するのですが、後からそれらが舅の脳内の情景で、現実はそうでないことを知らされます。そのように脚本が組み立てられています。うまい。

 登場人物の役名は「舅」「姑」「息子」「嫁」。「舅」「姑」が「息子」の両親です。劇中、登場人物たちがこの役名で呼び合うことはないのですが、役名が劇中でのそれぞれの立場と人間関係を現してます。そのように演出されてます。うまい。

 連続放火犯は日常を破滅させる危機の象徴なのでしょう。周囲に無関心で現実から逃避している舅には、その危機と危機の結果が認識できない。この舅を演じるパク・ワンギュの茫洋とした風貌と演技が、一見誠実そうで、内心は周囲に無関心な冷たい孤独な男という役柄にうまくはまってます。

 身勝手で頼りなくて、最後は亡霊になっちゃってる息子のキム・ジュワン。相変わらず面白い役をやりますねぇ。結婚式での無表情な顔がいい。
 この息子、導入部の最後で死んでますから、本編では最初から亡霊という設定なのでしょうか。今、自分でこの記事を書きながらあれこれ考えて、そうだったのかな、と思ってます。あぁ、もう一度見たい。

 度々流れる曲、ソン・チャンシク(송창식)の「幸せな朝(행복한 아침)」がとても印象的でした。教保文庫光化門店のHottracksでCD探したのですが、店頭在庫がなくて入手できなくて残念。帰国後も頭の中で繰り返し流れてます。

 それにしても、この作品といい、今年のBeSeToで上演された『そんな驚くな(너무 놀라지 마라)』(同じくパク・クニョン作・演出)といい、現代の韓国のお父さんってそんなに問題アリなんでしょうかね。家長がその役割を果たし得なくなった時代ゆえ、でしょうか。

 16時の回には、大学の演劇専攻の学生たちが観劇。この荒唐無稽な作品、彼らに大受けでした。

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